ブックマーク / sotokuro.hatenablog.com (12)

  • 初心と基礎 - うごく水たまり

    たしかなことは言えないけれど、エッセイも小説も、誰かとの関係を描いているようだと気づいたのは14年前のことで、だから自分の好きな文章を書いてみようと意気込んでいたぼくは、そのことに気づいた時にはっきりと絶望して、なぜならとても孤独だったから、人と人との関係などというものには持ち合わせがなく、エピソードがなく、さみしく、またみじめで、孤独だからこそ読書が好きだったはずなのに、ひとりでも最後まで続けることが出来るから文章を書こうと思ったのに、孤独なままでは何も書くことが出来なかった。ひどい裏切りに会った、と思った。書くに値するテーマをひとつも持っていない、とぼくは思ったけれど、ぼくより歳下の作家が面白いエッセイを書き、小説の新人賞を獲っていると気づいた時には、再度絶望することになった。人と人とのかかわりや、人生経験などというものは、書くために必要な要素なのではなく、当に必要なのは感性やセンス

    初心と基礎 - うごく水たまり
  • 競艇場でジャズを聴くとおじさん力がアップする - うごく水たまり

    昼過ぎにむっくりと起き上がる。 今日こそは何か行動らしい行動をしなければならないという使命感に駆られる。 昨日は部屋に引きこもってcharaと一緒に歌ったり、キャンプ用の毛布をマントのように装着して踊ったり、窓辺に佇んで「つばめの巣ってコンクリみたいに固いのはなんでだろう」って考えたりしているうちに過ぎて行ってしまい、それはそれで得難い幸福がミリグラム単位で含有されていたのではあるが、それにしても心的な陰に踏み込み過ぎた一日となってしまった。 なってしまって構わないのだが、心的な外聞の悪さが結局は負い目となる。 つまり、心的な客観性が「きみは何をしているんだい?」と問うてくる、その答えに「うーん、何って言われてもぼうっとしているんだよ」としか答えられない、その状況が心を徐々に蝕んでいくのです。 蝕んでいく状況が分かっているなら、その状況を変えればいい。つまり最低限の心的な言い分を作っておく

    競艇場でジャズを聴くとおじさん力がアップする - うごく水たまり
  • 電話を待ちながら - うごく水たまり

    洗濯機を回しながら電話を待っている。 いつ鳴るのかは、わからない。しかし大事な電話なのだ。 上の階で硬いものが床に落ちる音が何度かした。鉄の塊のような、とても硬いものの音だった。そのあとくぐもった人の声がした。落ちたものについて誰かが話しているようなのだが、何を言っているのかはわからない。男と女が話している。次第に女の声が大きくなる。対抗するように、男が太い声でぴしゃりと何かを言い放った。そしてとても静かになった。 窓を開けた。アイコスの筒に煙草を差した。窓からは空と車の列が見える。殺人事件ではないかと思った。 男は何かの弾みで客Aの頭をクリスタル灰皿で殴った。倒れた客Aの頭が床を打つ。男はクリスタル灰皿を取り落とす。そこへ共犯の女が現れ「何してんの、計画と違うじゃない」と不平を言う。「こいつが悪いんだ。俺を見くだしやがって」男は死体を見おろしながら言う。二人は静かに口論を始めるが次第にエ

    電話を待ちながら - うごく水たまり
  • 地の果て - うごく水たまり

    サイバーパンク2077のメインシナリオをとりあえずクリアした。 12月29日から始めて1月4日2:53の段階でプレイ時間は79.8時間だった。何度も寝落ちしたので放置時間がかなり含まれているにせよ、メインシナリオにボリュームあったなあという印象。普通にプレイしても1週間はみっちり必要になる感じ。大変おもしろいゲームだった。 2020年12月10日のリリース当初、期待が非常に高かったのにバグだらけでまともにプレイ出来ず、あまりにもクレームが多かったので返金対応まで行ったことは記憶に新しい。ジャンルがサイバーパンクの段階でぼくもずっとやりたかったんだけれど、ゲーム自体のお値段も高額だったので手を出せずにいたのであるが、もうリリースから2年も経っておりバグも改善されているだろうし、年末のスチームのセールで半額になっているのに気づいた瞬間に購入した。 シナリオが進行不可となるような致命的なバグは発

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  • どうでもいいけど好きなこと - うごく水たまり

    毎朝、電子レンジの中でウインナーが爆発する。 バン! と、くぐもった音が聞こえる。 耐熱ガラスの中に、溶けたチーズが飛び散っているのが想像できる。 大体50秒ほどの加熱で爆発する。 ウインナーの皮は、毎回必ず縦に破裂する。きゅっ、となっているところからきゅっ、となっているところに向かって裂ける。横に裂けることはない。おそらくウインナーの構造上、破裂しやすい箇所というのは決まっているのだろう。 一度、爆発を防ごうと思い、加熱を40秒にしたことがある。 すると予想通り、爆発はしなかった。 耐熱ガラスの中に、あたたかくなったつるりとしたウインナーがあった。 私はつるりとしたウインナーをべた。おいしかった。 しかし、何かが違っていた。 ウインナーのその綺麗さは、なぜか私を不安な気持ちにさせた。 それ以来、加熱を40秒にしたことはない。 毎朝、ウインナーが爆発する。 バン! と爆発音がして、耐熱容

    どうでもいいけど好きなこと - うごく水たまり
  • ライブ - うごく水たまり

    ライブに行きませんか? と、Aさんに誘われた。 どういうバンドが出るのか調べてみる。ライブハウスの質素なサイト。 その日の出演は知らないバンドが二つと、ぼくが20年前にファンになってからずっと影響を受け続けているバンドだった。いつかきっと死ぬまでにライブに行こうと思っていたバンド。 えっ? Aさんにこのバンドが好きって言ったっけ? 言ってないと思う。Aさんが好きにならなそうだし、そんなに有名なバンドでもないからなんか変なマウントみたいに思われても嫌だし、だから言ったことはないと思う。でも、ならなぜここにそのバンドの名前があるのか。おかしい……何かがおかしい……狂っている。奇跡というか、奇跡じゃないか。 ぼくは「行くことにしました」とだけ返信をした。 20年溜め込んできた気持ちは、20年の歳月によってもっと複雑な愛に変化している。 それはまるで家族に対する愛である。自己に深く根ざしているから

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  • 流れ者 - うごく水たまり

    ぼくが退職することが部署内で発表になった。 アルバイトや短期派遣を含めると17回くらいの退場をしてきたぼくだから、こういう時、人間がどうなるかくらい分かってしまっていて、見慣れた光景にまた愛想笑いを振りまく。 筋金入りの流れ者と会いたい。

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  • 人の業 - うごく水たまり

    めちゃくちゃ忙しい1日だったので残業をして、その後、同僚と焼肉をべビールを飲み、帰宅時に駅に着いた途端、先輩から電話が来て少し笑い話をして、到着した電車にぎりぎり乗り、乗った電車が運転を見合わせており、駅のホームに放り出され、混迷を極める雑踏の只中でこれを書いている。一体、今日という一日にいくつのイベントを放り込めば神の気が済むというのか。あまりにも凝縮し過ぎていて、もうなんの余裕もない。ひとことで言えば、うんざりである。うんざりであるが、ポジティブに言えば充実している。神は乗り越えられる試練しか与えないという。それならば、神はバランス感覚マジで無い。 先輩が電話で言っていた。俺の部署は月の労働時間300時間だよ。一般的な月労働時間は160時間だと言われているから、過労死ライン軽く超えていますね、はははとぼくは大笑いをした。そして涙をふいた。神はバランス感覚マジで無い。先輩だって懸命に生

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  • 萌えた - うごく水たまり

    カモミールが萌えた。 ひょろひょろで髪の毛みたいに細い茎、双葉もミニチュアサイズ。見るからにかよわい。 けれど、なんとまあかわいいことでしょう。 もしかしたら、種のまま死んでしまうこともあるんじゃないかと思っていたから、命が動き出すという、ただそれだけのことで感動している。 萌える、という言葉が草木の発生を意味していることと、スラングとして心のときめきを意味していること、そのふたつは別々ではなく根が同じだということに気がついた。 芽生えるという現象は、ときめきだ。 また最近では、笑うことを「草を生やす」と言うこともあるけれど、そう考えると日人のネットスラングは自然に根ざした言葉が多いようであり、現象と情緒が結びついているところが愉快である。 どんどん草が生えればいい。 水をかけてあげよう。 会社の同僚と「アニメの世界に入れるとしたら、入りますか?」という話をした。 同僚は入りたくないと

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  • ペンラ - うごく水たまり

    書いている、今日はアルコール性飲料を6杯か5杯か、そんくらい飲んだ終電間際の山手線でこれを書いている2325時。僕が考えているのは、というより触知した真実は、ナチュラルボーンコミュ強はやっぱつええなあということ。ぼくは生粋のコミュ障として生まれ、であるが故にある程度のコミュニケーションを学ばざるを得なかった、いわば培養された養殖のコミュ力で生きてきて、それでもなお人がそこそこ話しかけてくれたり外黒のパワーになってくれたりするのは培養の底力という感じがしてだから自らがリア充(マージンがないの意)であることを驚嘆しているわけなんだけども、ナチュラルボーンコミュ強が有するカリスマの発動にはやっぱ敵わんなあとなんとなく考える。もちろんコミュ力においては、という意味だ。ナチュコミュ強はやはり人を惹きつける力、カリスマ・アイドルみたいな力が確かにあるし、僕も多少そこに惹かれはするし関心もするし助けられ

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  • 状況・精神状態 - うごく水たまり

    色々な精神状態で書く試み。 現在はお昼休みである。今日は気分が重いので堂には行かないこととする。堂には種々様々な人間がおり、なんか疲れるので元気な時にしか行かない。元気な時に行ってもあまりご飯の味が分からない。集団の中にいるとエネルギーがすり減る。これはぼくがあまり喫茶店に行かない理由でもあるし、対人恐怖的な側面の現れでもある。生きづらいと言えば生きづらいのだけれど、大丈夫なときは大丈夫なので対応は放置されている。その時々の状況・精神状態によって行動をアジャストしていく他ない。ぼくには対人恐怖に対応する器官が不足しているのだから仕方ない。ある種の感情を人より過剰に受け取ってしまうことは、脳のユニークな特性である。それは個性と密接に関係している。ぼくの個性は、特に個性的というわけではないんだけれども。 さっきは少しミスを犯して焦ってしまった。すぐにリカバリできたので良かったけれど、小さな

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  • 屋根裏みたいな部屋 - うごく水たまり

    今週のお題「わたしの部屋」 はじめて部屋を訪れた姉は「屋根裏みてぇな部屋だな」と言った。 確かに屋根裏みたいな部屋だった。建物の構造上、壁の一部が斜めになっているし、それほど広くもない空間に生活の道具が詰まっている。その道具は使い込まれていてかすれ、使われないものには薄く埃が積もっている。屋根裏みたいな部屋だ。僕はそこで暮らしている。おおむね幸福に。 部屋のチャームポイントについて考えてみると、それはおそらく個性のようなものが凝縮されているところなのだろうな、と僕は思う。それはどんな部屋にせよ、そこで暮らしている人間がいるのなら、好むと好まざるとにかかわらず表出するものなのだろうから、「僕の部屋」のチャームポイントではないのだろうけれど、自分自身が気づいていないだけで、僕の部屋には僕の個性があるかのかもしれない。部屋を見渡してみて、そういうものが無いか探してみる。まるで他人の部屋をはじめて

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