たしかなことは言えないけれど、エッセイも小説も、誰かとの関係を描いているようだと気づいたのは14年前のことで、だから自分の好きな文章を書いてみようと意気込んでいたぼくは、そのことに気づいた時にはっきりと絶望して、なぜならとても孤独だったから、人と人との関係などというものには持ち合わせがなく、エピソードがなく、さみしく、またみじめで、孤独だからこそ読書が好きだったはずなのに、ひとりでも最後まで続けることが出来るから文章を書こうと思ったのに、孤独なままでは何も書くことが出来なかった。ひどい裏切りに会った、と思った。書くに値するテーマをひとつも持っていない、とぼくは思ったけれど、ぼくより歳下の作家が面白いエッセイを書き、小説の新人賞を獲っていると気づいた時には、再度絶望することになった。人と人とのかかわりや、人生経験などというものは、書くために必要な要素なのではなく、本当に必要なのは感性やセンス