佐和隆光先生の『経済学のすすめ』(岩波新書)を面白く読ませていただいた。国立大の文系学部廃止論に対して、文系の学問、中でも、経済学は何の役に立つのか、考えさせられる内容だった。その役立ち方は、立場によって変わってくる。体制の擁護にも、批判にも、両方に使える一方、建設的な答えがあまりないのが経済学の特徴だろう。 ……… 私の持論は、「常識は高校で習い、大学では常識を超える真実を学ぶ」というものだ。経済学で第一に挙げられる「真実」は、アダム・スミスの「見えざる手」で、私利の追求が社会の豊かさを実現するというものだろう。常識では、強欲は社会の害悪とされるからだ。当然ながら、この考え方は、持てる者がますます持つことを肯定するのに役立つ。問題は、この考え方が現実的かどうかである。 徹底的に私利が追及されているのなら、世の中には、余資も失業も存在しないはずだ。低金利と低賃金は組み合わされ、価値が産み出
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