居間を掃除していると、台所のテーブルにいる娘から「このあとどうする?」と声がかかった。 見るとさっき食べていい? と聞かれてどうぞどうぞと答えた、パイナップルの缶詰がテーブルの上で途中まで開いている。 どうも、プルタブに手をかけて蓋をくりくりめくったはいいが、最後の最後、蓋をむしり切れずにいるらしい。 なるほどな……と思った。 プルタブ式の缶詰というのは最初はぐっと力を入れればめくれて、そのまま開いていく。ただ、そう、最後なんだ。最後の部分、蓋をもぎり取るのがちょっと怖いんだ。 とくにパイナップルの缶詰はシロップがなみなみ入っているから力まかせに蓋を取ると缶が揺れてシロップがこぼれる。 「力まかせ」に耐えるためにはしっかりと缶自体を押さえる必要もあってその自信も試される。 普段は何も考えずにその難儀を乗り越えていたのだなと、娘のよどみを見て思わされた。 娘は「このあとどうする?」と聞いた。