映画『もののけ姫』を劇場公開していた頃、スタジオジブリの制作現場に密着したというドキュメンタリー番組がテレビで放映された。その中で、こんな場面があった。 タタリ神による呪いを受けたアシタカが、彼の腕に出来たアザを、エミシの村の長老たちに見せる場面。その原画が上がって来たのをチェックする宮崎駿は、自分を写すカメラの前で、次のようなことを言い放った。 「人は驚いた時に、身を乗り出す人と、身を引いて逃げる人の2種類がいる。この原画は、身を引く反応の絵になっている。それは、これを描いた人間が、イヤなことから逃げ出すような人間だから」 ナチュラルに原画マンに対する人格攻撃を加える宮崎の姿が、全国放送の電波に乗った瞬間であった。 これとは対照的な話を、一つ紹介する。雑誌『アニメージュ』では1982年頃、安彦良和が自筆のイラストと共にエッセイを連載していたことがある。その安彦のエッセイの一篇で、演出家が