(Dir. Darren Aronofsky, Black Swan, 2010. アメリカ) 芸術と生と性の葛藤を描いた凄まじい映画だった。以下、ネタバレ感想。 物語は、二ナの夢から始まる。悪魔に誘惑され、悪魔の腰に足を巻きつけて踊る夢であり、「男性に誘惑されたい」というニナの願望を表しているように見える。ここで、ニナが王子に誘惑される白鳥として、十分な素質を備えていることが分かる。 問題は、白鳥にぴったりのニナが、その圧倒的官能性で王子を誘惑する黒鳥をも演じられるか否かである。ニナを次の公演の主役に抜擢した演出家トマ・ルロワは言う。「君は白鳥としては完璧だ。問題は、官能的な黒鳥を演じられるかどうかだ」。以下では、表現者としてのニナがどのように黒鳥を踊るに至ったか、その表現はなにを目指していたのかについて考える。 管理の対象としての肉体: 映し出される彼女の生活は、簡素なものである。母親
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