トップ > 特集・連載 > 東京達人列伝 > 記事一覧 > 記事 【東京達人列伝】 『種字彫刻』に光再び “神業”伝える最後の彫師 清水金之助さん 2009年4月6日 「細かい字は息を止めて彫ります」と話す清水さん=大田区中央で ルーペをのぞき、マッチ棒の先ほどの地金の面に彫刻刀で左右逆の鏡文字を彫り出していく。「文字に魂を込めるんです」。生まれたばかりの文字は、線の一本一本が絶妙のバランスを保ち、銀色の光沢を帯びていた。「種字(たねじ)」といい、かつて活版印刷で使う金属活字を量産するための「母型(ぼけい)」の基になった。 高等小学校を卒業した十四歳のとき、名人といわれた彫師に弟子入りした。最初は「不器用な自分には無理」と家に逃げ帰ったが、師は「自分で不器用と言う子ほど一生懸命やるもんだ」と迎えてくれた。 彫り方は年長の兄弟子のやり方を見て覚えた。仕事に厳しい人で居眠りでもす