しかし、これらの改善だけでは余りにも不十分である。なぜなら、若年層全体の貧困化によって、奨学金返済が延滞者を生み出すばかりでなく、社会の持続可能性自体を危機に追い込んでいるからである。 図5は、延滞者と予定通り返済している無延滞者それぞれについて、奨学金利用者の年収の推移を比較したものである。 2007年度から2012年度にかけて、延滞者の年収構造にはそれほど大きな変化がないのに対して、無延滞者においては年収の急速な悪化が進んでいることが分かる。 これは若年労働者全体の貧困化が進んだことで、予定通り返済している人の多くが厳しい経済状況の下で、奨学金返済を余儀なくされている状況を示している。 このことから、奨学金を「返せない」問題だけではなく、「返す」ことによる問題も重要となってきていることが分かる。 結婚・出産・子育てへの影響 奨学金を返済している人々の間で急速に広がっているのが、「結婚で