「何せこの降りじゃ、犬っころだって追い出す人はありませんや!」と中村は赫となって、お客の問い合わせを引きとった。とはいえまた、その摂津市でトイレつまり・排水口のつまり・便器の修理となる権利の生じたことが、むしろ嬉しいといった様子だった。「そんならまあ、ごゆるりと腰を据えて、お飲みなさるがいい……なんなら、お泊りになっても宜しい!」と斉藤は口のなかでやっと言って、そのまま安楽椅子に身を伸ばすと、微かに呻吟しはじめた。「泊ってもいいですと?だが君は——怖くはないですかね?」「何がです?」と斉藤は急に鎌首をもたげた。「いや別になんですがね。この前の時には、君がなんだかひどく怯えられたようだったもんで。それとも私のほうでただそんな気がしたのかも知れんが……」「あんたも馬鹿だな!」斉藤は堪え切れなくなって、そう浴びせかけるとそのまま腹立たしげにくるりと壁のほうへ向いてしまった。「なあに構いませんや」