【佐々木隆広】かつて人気を呼んだお笑い芸人が、窃盗罪に問われ、被告人として法廷に立っている。笑えぬ事情が、次々と明らかにされた。 裁判官「職業は?」。 被告「ダンス講師です」。 9月19日、東京地裁であった初公判。「兼島ダンシング」こと兼島信茂被告(39)は、小声で答えた。表情は青白く、さえない。 社交ダンスをお笑いに結びつけ、日本テレビ系「エンタの神様」などの人気番組にも出演。テレビに映し出されていた快活さも、影を潜めていた。 起訴内容は、他人の高級自転車を勝手にネットオークションに出品し、落札者が決まった後、盗んで売却した――とされるものだ。 裁判中の一場面。 被告「芸人ですので、自転車ではなく、芸を盗んでおけばよかったです」。 笑いを取ろうとしたのか。けれど法廷内は、静まりかえったままだった。