作家の想像力 高村薫という高名な小説家をご存知の方も多いでしょう。これまで主にミステリーの分野で大作傑作を数多く世に送り出してきた人です。先日、私はついに氏と対談することになりました。 わざわざ「ついに」と言うには、個人的に理由があります。 高村氏は最近15年ほど、読む側にすれば三部作と見ることのできる、『晴子情歌』『新リア王』『太陽を曳く馬』の大著を執筆・発表してきました。 実は、私はミステリーを読む習慣がないので、これまで氏の作品に触れたことがなかったのですが、『新リア王』が新聞連載され始めた頃から、困惑するような事情が出来するようになりました。 まず、永平寺で同期だった友人が、当時まだ永平寺にいた私に、新聞連載の切り抜きを大量に送ってよこして、この作品の主人公はお前がモデルだろう、高村氏と知り合いで、ここに出てくる永平寺の修行の様子はお前がネタ元だろうと言うのです。この作品は、主人公