「飛び込み場所」のひとつを指さす茂さん。断崖絶壁を見下ろし、同行した編集者は思わず足がすくんだ 撮影/齋藤周造 日本有数の景勝地で、命を絶とうとしている人々に声をかけ続けて17年。ひたすら話を聞き、徹底して寄り添う茂幸雄さんは、自身の活動を「自殺防止ではなく人命救助」と言い切ってはばからない。生きていく勇気を取り戻すには、自殺を止めるだけでは足りないから。本当は助けてほしい──、そう切望する心の叫びを知っているから。 自殺の名所「東尋坊」 「ここがいちばんの飛び込み場所です」 平然とそう語る案内人に指さされた方向は、ゴツゴツとした岩肌がV字形に開けていた。そこから先は、ほとんど垂直に切り立った岸壁が両側に連なり、日本海へ向かって延びている。 ここは海抜25メートル。ビルの高さでいうと7〜8階に相当する。両腕を伸ばし、筆者は一眼レフを落とさないよう気をつけながら撮影した。真下の海面に恐る恐る