「有名大学でなければ、大学に進んでも意味がない」「いまは学歴より『手に職』が重要だ」。よくそういわれるが、いずれの認識も間違っている。有名大学でなくても、成績が優秀でなくても、大学で勉強した人ほど所得は増えているからだ。では、なぜこうした誤解が拡がっているのか。東京大学の濱中淳子教授が考察する――。 「ニッポンの学歴言説」を疑う 最近、与野党で教育費の無償化をめぐる議論が活発になっている。誰もが希望すれば学ぶことができる環境を――その聞こえはいいが、こと大学教育の無償化に関していえば、世論の大勢は否定的な見解にある(※1)。「とりあえず進学するという人も多いなか、なぜその教育費を公的に賄うのか」。そして、併せて示されるのが「もはや大学は多すぎる」という意見だ。 ※1:矢野眞和・濱中淳子・小川和孝『教育劣位社会――教育費をめぐる世論の社会学』(岩波書店、2016年)で詳しく論じているので、参