読書はすれど、いわゆる「小説」を読まなくなって何年か過ごしましたが、2013年は小説熱が少し復活してきたので、まとめます。来年はもっと読みたいですね。 10位 ▽ 東浩紀『クリュセの魚』(河出書房新社) 東浩紀はセカイ系について、ジャック・ラカンの用語を用いて「想像界と現実界が短絡し、象徴界の描写を欠く」という表現で定式化できるとよく説明しています(引用は東浩紀の近著『セカイからもっと近くに』より)。想像界(きみとぼく)の行動が現実界(世界の危機)に直結しており、そこには象徴界(社会)が一切登場しない。こうした「セカイ系の困難」への東さんなりのひとつの回答が、本作だったのではないかと思います。 本作はSF的な設定における「きみとぼく」の物語で、とてもセカイ系っぽい小説です。にも関わらず、本作では「きみとぼく」の細やかな感情の機微はとても簡素に描かれており、描かれる危機も決して「世界滅亡」と