東日本大震災から3月11日で10年を迎える。毎日新聞は400人を超える震災遺児と孤児、その保護者たちにアンケートを送り、遺児と孤児181人と保護者163人から回答をもらった。それぞれの「10年」の営みが見えてくる返事を寄せてくれた遺(のこ)された子どもやその家族を記者が訪ねた。 雲一つない澄み切った青空が窓いっぱいに広がる喫茶店で、その女性と待ち合わせていた。宮城県に住む佳枝さん(仮名)。54歳。自宅は内陸部にあり無事だったが、津波で7歳上の夫を失い、一人で長男と次男の泰彦さん(同)を育ててきた。予定より1時間も前に到着してしまい、もう一度アンケートの文面に目を通した。 「私も息子も人生のドン底を経験しました」。そう書かれた自由記述欄の文末には、つらい過去を思い出させたくないので泰彦さんの回答は見送るとの断り書きがあった。長男は震災翌年、県外に進学してそのまま就職した。この日会うのは佳枝さ
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