わが国は主要な先進国のひとつであり、高度に発達したインフラが整備される傍らで、大地震や豪雨などの大きな自然災害にも度々見舞われています。また人口の大半が大都市部に集中し、農村や漁村、山間部などでは一次産業の担い手の極度な高齢化や人口減少に悩んでいます。また、年間3万人を超える人々が生きる望みを捨ててしまうという現実も、何でもなく見える私たちの日常的な身の周りに、絶えず人の心身を危うくする脅威が迫っていることを物語っています。いったい私たちの身体や精神は、どうすれば健やかに保てるのでしょう。 この課題に対して、建築や都市デザインからの方策を見出すことは可能でしょうか。もちろん一筋縄では行くとは思われませんが、人々は住まいであれ、職場であれ、訪問先であれ、日々の生活を建築と無縁に過ごすことはできず、絶えず建築に接しています。環境に配慮した建築の考え方は、今では単に省エネルギー的な視点からばかり