聞き手/大西康之 京セラ(年間売上約1.5兆円)、KDDI(同約4.5兆円)という二つの巨大企業を創業、瀕死のJALを再生に導いたカリスマが語った、日本の会社を、そして日本の社会を「幸せに導く」方法とは? 虚飾をむしる ——東芝や三菱自動車のような名門でなぜ不祥事が相次ぐのでしょうか。 稲盛 今の日本企業は才覚のある人をリーダーとして重用します。私はリーダーを選ぶとき、能力ではなく人間性や人格で選びます。能力に多少の問題があっても人格のある人は努力をして成長する。そういう人をリーダーに選んでこなかったことが、問題を引き起こしているのではないか。 昔、京セラがまだ町工場だった頃、滋賀の工場で細かい仕事を黙々とする男がいました。工場へ行くたびに、なぜか彼の手元に目がいってしまうのです。中学しか出ておらず、才能などない、真面目が取り柄の男でしたが、周囲に押される形で頭角を現し、課長、部長になって