過去を生きた人々の遺骨に、技術革新が新たな価値をもたらしている。骨のゲノムを調べる最先端の人類学研究は、従来の考古学や歴史学に基づく定説を続々と書き換える一方、国内外で民族や先住性を巡る新たな争いも引き起こし、研究倫理や成果の悪用が問題化している。遺骨を巡る「ゲノム革命」の光と影を追う。 「日本人の起源」再考 「日本人の起源」を示す、最も有力な仮説とされる「二重構造モデル」。まず南方系の縄文人が日本列島にいて、弥生時代に北方系の集団が渡来し、徐々に混血して成立したとする考え方だ。人類学者の埴原(はにはら)和郎博士(1927~2004年)が説を発表して30周年となる2021年11月、博士が生前在籍した国際日本文化研究センター(京都市)で、モデルを問い直す会合が開かれた。