佐久間君は何も考えていなさそうなWeb制作会社の新入社員だった。「弊社はお客さまをパートナーと考え」と、いつもの口調で話し始め、自社開発のCMSの機能からスマホサイトの自動変換など、一通りの説明をしながら、私の作り笑顔に気付いてしまったのだろう。プレゼンを終えて雑談タイムに入ると「どうしたら上手に営業ができるんでしょうか」と尋ねてきた。「営業が出版社の編集に営業の仕方を聞くなんて」と思ったが、つまらなそうな顔をしてしまった後ろめたさもあって、「自分が知っているホンモノの営業は、自社商品を売らずに自分の顧客を売っている」という話をした。 営業が10人いたら、9人は自社の商品を売ろうとする。Web制作会社なら、CMSを導入しましょう、スマホサイトを作りましょう、リニューアルしましょう、プロモーション用のサテライトサイト作りましょう、という具合だ。顧客がCMS未導入、PCのみ対応サイト、10年間