僕には「推し」が分からない。「推し」というからには誰かに推薦するのだろうが一体なぜ、誰に推薦するのか分からない。アイドルは映画やガジェットではない。ましてや神でもない。誰かにオススメできる気持ちが分からない。 アイドルのブログを読み、アイドルの出演番組を見て、アイドルのイベントに行き、アイドルについて一日中考え、アイドルが好き過ぎて悶絶しながら酒ばかり飲んでいた僕は、他人から見ればアイドルを「推し」ているように、あるいは「応援」しているように見えたかもしれない。そんな気は毛頭なかった。僕にとってそれは単に「恋」だった。 昨年の秋、アイドルから女優になった彼女が久々にファンクラブバースデーイベントを開催した。僕は当然それに行った。特に理由はない。当然だからだ。そこで彼女がステージの上で歌って踊っておしゃべりするのを見て、僕は考え込んでしまった。そこで湧き上がって来た感情をまだ「恋」と呼んでい