女性用トイレをめぐる最高裁の判断が議論を呼んでいる人間には宿命がある。生まれる時代も国も性差も選ぶことが出来ない。そうした宿命に抗おうとすることは可能だが、根本的に宿命から逃れることは不可能だ。それが人生というものだ。 例えば、考えてみてほしい。大東亜戦争の際に青年として生きた人々は従軍し多くが亡くなった。私の祖父母の兄弟もそうだった。平和な時代に生まれていたならば、何を成し遂げることが出来たのだろう。涙なくして彼らの人生を振り返ることは出来ない。いつも祖母は嗚咽しながら兄弟のことを語っていた。だが、日本を恨むことはなかった。その時代を悔しがっていた。彼らは生まれる時代を選べなかった。尊い命を国に捧げたのである。人生の中で自らの出来うる限りを行った。高貴な生き方としか評せない。 政治学者の岩田温氏宿命を甘受して亡くなった人々。こうした人々を不自由だという議論がある。しかし、それは自由につい