人と芸術とアンドロイド―私はなぜロボットを作るのか [著]石黒浩 外出することが危険になった未来社会、本人に代わって外で働くロボットが「惨殺」されると、本人までもが死んでしまうという事件が起きるのは、映画「サロゲート」である。 ところが今、自分そっくりのロボットを開発して、逆に「人間とは何か」を探究する研究者がいる。 本書の著者である大阪大学大学院の石黒教授は、表情から動作まで自分と同じ行動を遠隔操作で行わせることができる「ジェミノイド」、つまり双子の自分を製作した。すると、映画のようなことが次々に発生したのだ。 実験によれば、自分の分身をカフェに座らせ人目に触れさせると、本人が街を歩いても、「ロボットが街を歩いていたぞ」と噂(うわさ)されるようになる。 まず分かったのは、より多く社会関係を結んだ方が「本人」と認められる事実だった。したがって本人は、先に認められた分身ロボットのほうから「自