マルクス・ガブリエルの『 なぜ世界は存在しないのか 』・・・、この極端に単純化された哲学的説明によって覆われたこの本を読むと、僕は戸惑ってしまう ( *1 )。この本でまず確認出来るのは、世界が存在しないことでもなければ、新実在論についてでもない。何よりも、"哲学を単純化しようとする著者の意志" です。それはおそらく、新実在論を世間に浸透させようとするための、そして新実在論を哲学史に刻むための、著者の戦略なのでしょうが、それが徹底しているため、この本について真面目に考えることは果たして意義があるのかと自問してしまいます。単純化して考えるとは、結局の所、哲学的なものからの撤退になりかねないのだから。 そして、そのような哲学の単純化が『 世界は存在しない 』という問題含みのテーゼを可能にしているとすれば、そのテーゼを批判的に考えることは、たとえ哲学に馴染みのない読者に分かりやすく伝える意義があ