6歳、いきなり襲ってきた疫病 1952年の夏は、テキサスの基準からしても暑かった。38度を超える日が25日もあり、「涼しい」と言われる日でもたいして涼しくはなかった。にもかかわらず、全米でプールは閉鎖されていた。映画館やバー、ボウリング場も営業しておらず、教会のミサも中止されていた。 街にはDDT(殺虫剤)がたっぷり散布されていた。この頃には、蚊がポリオを広めているわけではないことを衛生当局は把握していたが、行政は何かやっていることを示さなければならなかった。だが、何をやっても効果はないように見えた。夏が進むにつれてポリオ感染者の数は増えていった。 7月のある日、ダラスの静かな郊外で、ポール・アレクサンダーという名の6歳の男の子が夏の雨のなかで遊んでいた。ポールは気分が悪かった。首が痛くて、頭痛がした。泥まみれになった靴を庭に置いたまま裸足で台所に入ると、背後で網戸が大きな音を立てて閉まっ