どこかで猫の鳴き声がした。歌うような、楽しそうな声だった。気がつかぬうちに視線は声の主を探していたが、この場所がペット禁止のマンションだと思い出してあきらめる。 いつもどおりの朝だ。慣れた朝だった。 テレビの雑音に耳を傾けるでもなく、いつものように朝食を前に座る自分を意識する。聞いていない言葉を意識するというのは思ったよりも気を使うモノなのだと、そんなくだらない新しい発見に思わず目を細めた。 冷蔵庫から出したヨーグルトはゆっくりと室温を吸い取って順調にぬるくなっていくが、いまだに放置されたままだ。質素な机には新聞と朝食のヨーグルト、それとテレビのリモコンがオブジェのように並んでいる。 ふとヨーグルトを食べるためのスプーンを出すのを忘れていたことに気がつく。 ――私は食べないから、忘れていました。 言い訳にも似た理由を見つけて椅子から立ち上がると、あわせるように廊下のほうから足音が聞こえてき
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