朝ベッドの中で、昨晩ほろ酔い気分でうっかり追加のトーストを焼いてしまったことを少しだけ反省していたら、唐突に母のことを思い出した。子供の頃、トーストを食べるために冷蔵庫からいちごジャムを取り出してきてパンに塗ろうとしたら、姿見の前で出かけ支度をしていた母にいきなり窘められた、そんな思い出だ。いや、窘められたというよりそれは賢者の託宣のようなものだったかもしれない。 「パンにジャムしか塗らないなんてダメよ。一緒にバターも塗りなさい」 ああ、そう言われてみれば、と子供の私は思い出した。いつも母が用意してくれていたジャムトーストには確かにジャムの下にバターも塗られていた。通い始めたばかりの小学校の給食では、いつもパンにはマーガリンかジャムかのどっちかしか付いてなかったから、私はそのことをすっかり忘れていたのだ。 「イギリスではパンにジャムしか塗らないなんてあり得ないのよ」 と、母は説得力が有るの