しかし、こういった個別の性的表現に対して簡単に「これはよい、あれはだめ」と言えるほど単純な話ではない。 筆者は主にポピュラー文化を対象とする表象文化論研究者だ。 今月刊行予定の学会誌『表象』に掲載される拙論「刺青に突き立てられる刃:『ゴールデンカムイ』における皮膚上の記号作用とギャグの機能」をもとに、今回は『ゴールデンカムイ』という作品の中で性的表現が作品全体の構造とどのように関わるかを考えてみよう。(全2回の1回目/続きを読む) 『ゴールデンカムイ』における「刺青」の意味 まずは、『ゴールデンカムイ』の物語を動かす仕掛けである暗号の刺青に注目しよう。 タイトルに「ゴールデン」とあるように、同作の登場人物たちがアイヌの隠した黄金を求めて争うことで物語は動きだす。黄金の隠し場所は網走監獄を脱走した囚人たちに暗号として施されており、登場人物たちはこの刺青を持った囚人たちを探すことになる。 刺青
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