『恐怖の哲学―ホラーで人間を読む』(戸田山和久/NHK出版) 興味がない人からは「怖いと分かっているのに、何でわざわざみるわけ?」と罵られ、冷静沈着な人からは「明らかにウソの話なのにさ、何でそんなに怖がるの? 大して怖くなくない?」と見下されることもあるホラー映画ファン。 しかし、上記の2つの疑問はもっともなところもあるし、その謎を解明しようとする本は少ない。そんな中で『恐怖の哲学―ホラーで人間を読む』(戸田山 和久/NHK出版)は、科学哲学を専門とする哲学者が、その問題に真正面から向き合った一冊だ。 最新の心理学や脳科学の知見まで導入し、「恐怖」や「ホラー映画」というものを解体していく本書。難しい言葉や概念も出てくる一方で、ホラー映画好きなら「はいはい、なるほどね」と頷いてしまう文章も数多く登場する。 たとえば、生きるか死ぬかの場面において、「合理的な選択と行動をもたらしてくれるのはむし