間違いなく戦史物なのだが、戦史物だからこそ、外債発行について理解が深まる本が「日露戦争、資金調達の戦い―高橋是清と欧米バンカーたち」だ。日露戦争で外貨(当時は正貨、金)は継戦能力、しいては勝敗を決定する鍵であった。日本は国際資本市場から資金調達を行ったわけだが、当時は途上国であって信用力が無く、容易にそれを成し遂げたわけではない。経済学の理論モデルではリスク評価や金融制約と言った無味乾燥な概念でまとめられてしまう部分だが、実際の資金調達ではそれをいかに判断するか政府や外国金融機関などの思惑が色々とあり、そういう部分が丹念に検討されている。戦況の変化が思惑にどう変化を与えたかなども語られており、興味深い。 1. 市場関係者が事実関係を整理 往々にして歴史書はそういうものだが、真実は闇の中である。外交文書や高橋是清、深井英五、金子堅太郎などの日記や口述などから事実関係を整理しているが、政治的立