■序にかえて・・・殿敷侃についての覚書 寺口淳治 殿敷侃が50歳でこの世を去ってから25年が経つ。彼の仕事を知る人々のあいだで、伝説のように語られ続けるその全体を見直すには、もう遅いのだろうか、いや、まだ早いのだろうか。 展覧会を準備するなかで、彼のことを熱く語る多くの人々に出会った。また美術の世界で活躍し、彼の仕事の本質を理解した人たちがいたが、彼らは殿敷に関して数多く紹介の労をとり、言葉を紡いでいる。そして何より、四半世紀(四分の一の25年間・しはんせいき)の暗が経過しても、彼のアトリエはほぼ生前のままにある(それは遺そうとした人々がいるということだ)。作品のほかに彼自身が整理したアルバムや手にしたさまざまな書籍、送られてきた手紙など、そこで私が目にした物は数限りない。これらの事と物によってこの文章は成り立っている。 今回広島市ゆかりの作家として殿敷を紹介するが、彼が広島市内で過ごした