被差別部落の問題だけでなく、まだ名前も付いてない 差別が、未だに世の中に出てくることが改めて衝撃だった。 今から約150年前、明治4(1871)年に明治政府は「それまでの身分制度で賤民とされていた人々の身分や職業を平民と同様にする」と太政官布告をしました。それまで交際、結婚、居住などにおいて様々な制約や差別を受けてきた人たちは、解放令により、平民として結婚や職業選択の自由、苗字の取得などを得ました。 ところが明治38(1905)年、長野県で教員をしていた島崎藤村が書いた長編小説「破戒」の中では、解放令から30年ほど経っても、未だ被差別部落の出身者にまつわる差別の実態が描かれています。 主人公の瀬川丑松は、優秀な成績を収め、教員となり、生徒たちからも信頼されていますが、家を出るときに父親から、被差別部落で生まれたことを決して人に明かしてはいけないとの戒めを受け、絶えず心苦しさを抱えています。