執筆者 唐木 英明 東京大学名誉教授。食品安全委員会リスクコミュニケーション専門調査会専門委員。日本学術会議副会長 安全と安心のあいだに 唐木 英明 2011年6月7日 火曜日 キーワード:放射能 発がん物質 放射線の作用には2種類ある。一つは「確定的影響」と呼ばれるもので、250mSv以上で白血球の減少、500mSv以上でリンパ球の減少、1000mSv以上で嘔吐や水晶体混濁などの急性放射線障害、2000mSv以上で出血や脱毛と5%の死亡、3000から5000mSvで50%の死亡、そして7000から10000mSvで99%の死亡が起こる。しかし250mSv以下ではこのような影響が出ないので、この作用には健康に被害がでる量の限界、すなわち「しきい値」があると考えられている。 もうひとつの作用は発がん作用だ。放射線は遺伝子に直接作用して、あるいは細胞内で活性酸素を生成することによって遺伝子に損