2006年に軍のクーデターで当時のタクシン首相が追放されて以来、タイではタクシン派、反タクシン派が政争に明け暮れ、両勢力とも、治水という長期的な政策の視点を欠いていた。 今回の洪水の被害拡大には、そうした政治が招いた「人災」の側面もある。 タクシン氏が失脚した後、タイの首相はスラユット、サマック、ソムチャイ、アピシットの各氏から、今年8月に就任したインラック氏まで、ほぼ1年に1人のペースで交代してきた。 この間、08年に反タクシン派がスワンナプーム国際空港を占拠、09年には東部パタヤでタクシン派が東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議会場に乱入し、会議を中止に追い込んだ。昨年はバンコク中心部をタクシン派が占拠し、軍の強制排除などで90人以上が死亡、大型商業施設などが次々に放火された。この騒乱で国民は二つの勢力に分かれ、和解は進んでいない。 首都は、政治勢力同士の騒乱と、政治の機能不全が招