薄いグリップのメリットは、ボールをラケットに乗せるような打ち方でコントロールしやすく、タッチのあるショットを打ちやすいということと、速いボールに合わせやすいという2点。その代わりに、高い打点で強打しにくいというデメリットがあるのだが、フェデラーの場合は、強くて繊細な手首を持ち、それをうまく使って高い打点で叩くこともできる点が大きな特徴だ。また、アガシと同様にハンド・アイ・コーディネーションが非常に良く、ミスヒットが少ないし、微妙なタッチのショットも抜群にうまく、他の選手たちからは「ゴッドハンド」とも呼ばれている。だから、彼にとっては薄めのグリップにしたほうが、その特別なセンスを生かしやすいのだろう。もちろん、チャンスボールが来れば、しっかり攻撃できるだけのパワーも持っており、薄いグリップのメリットを持ちながら、現代的な強打もできる理想的なフォアハンドということになる。
フェデラーのストロークの特徴は、深さと角度を自在にコントロールできるという点。浅いアングルでもフルスウィングするし、高く弾むショットを深くへ打ち込むこともできる。そのうえ伸びがあるので、対戦相手はまったく予測がつかないし、仮にヤマが当たっても対処がむずかしい。 フェデラーが他の誰よりも優れているのは、力のさじ加減だ。ふつう安定性を優先させればグリップを強く握りがちだし、逆にパンチ力(リストワーク)を優先させれば、グリップが弱くなり面がブレがちになるものだ。 つまり、力むのか脱力するのか。誰しもが迷う場面で、フェデラーはその両立を微妙な力加減で実現できるのだ。しかも絶妙のタイミングでそれを行なう。必要なタイミングで必要なだけの力を込めるが、それ以外は極力リラックスする。それが彼のプレイスタイルだ。 フェデラーのショットに伸びがあるのは、それが最大の要因だ。
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く