エッセイ Blue 7 自分だけの風景というものがある。 そんな風景にめぐり逢うと、すぐにそれとわかる。 一年に2、3回もない。あればいいほうだ。 友人といっしょのときにそんな風景に出逢うと、僕はできるだけ早いうちに、その場所へまた向かう。 今度は一人で。 予定はなにも入れない。真っさらなスケッチブックのような一日のなかで、新しい風景と向かい合う。僕も── 僕の気にいる風景たちも── 人見知りだから、馴れるまでに時間がかかる。自分の心がひらくのを待つ。風景のほうも心をひらいてくれるのを待つ。 この時間も、きらいではない。 やがて風景は── 内気な十代の少年や少女が徐々にガードをゆるめるように、その柔らかな美しさを僕に見せてくれるようになる。 花々は立体感を増し、色彩は鮮やかになり、木々の輪郭はくっきりとし、空が奥行きを深める。鳥の声や虫の羽音が聞こえだす。命の甘やかな匂いも嗅げるようになる