≪ L ≫至上主義の図書館へようこそ。司書は趣味嗜好のまま、気の向くまま、あちこちへと流浪しますゆえー♪ もっと早くに出逢いたかった 伊藤計劃 虐殺器官 [著]伊藤計劃(いとうけいかく) (ハヤカワ文庫JA)720円+税 ■空恐ろしいほどの傑作 伊藤計劃は、3冊の長編小説と数作の短編を遺(のこ)して、昨年、34歳の若さで 病没した。デビュー作である『虐殺器官』は、2007年の刊行後、数々のメディアで 絶賛された。同時期に世に出た円城塔と並び、このところ復調著しい日本SFの牽引 (けんいん)車と目されていた伊藤氏だが、その才能が狭義のSFというジャンルに留 (とど)まるものではなかったことは、何よりも本作を一読してみれば分かる。 舞台は「9・11」以後の「もうひとつの近未来」。テロとの戦いの末、先進諸国からは 危険が一掃されたが、その一方で、地球上のそれ以外の地域では、必ずしも原因が定かでは