中世ヨーロッパにおいて騎射を行う弓騎兵は発達しなかった。しかしこれは騎射を知らなかったわけでは決してない。たとえば、中世ヨーロッパにおいて軍事指南書として最も高く評価されていたものの一つである4世紀頃に記されたヴェゲティウスの『軍事論』でも弓は徒歩でも騎乗でも使えるようにすることを求めている。シャルルマーニュもその勅令で、騎兵の装備の一つとして弓矢を求めている(但し、これを騎射のためと見るか、下馬して用いる武器として意図してたのかは定かでない)。 騎槍の扱いで特に注目されることが多い11世紀後半に描かれたバイユーのタペストリーにおいても、一騎だけであるが騎射を行う弓騎兵が描かれている。これらのことから、騎射をする弓騎兵が皆無ではなかったことは明らかである。しかし、その戦場における役割は、おおよそ限定的であったと言わざるを得ない。例に挙げたバイユーのタペストリーでも、騎兵の主要な武器は槍と剣