「ズー」と呼ばれる動物性愛者たちが世界中にいるらしい。『聖なるズー』という本は、性暴力に悩んだ経験のある著者・濱野ちひろがズーたちと真摯に、真正面から向き合ったドキュメントだ。 本書に出てくるのは私たちの知らない世界の人々であるとは思うけれど、「さまざまな関係における加害と被害の構造に向き合った記録」として読むことができるはず。2019年に第17回開高健ノンフィクション賞を受賞した、偏見を持たずに多くの人に読んで欲しい1冊を紹介します。 動物性愛者が問いかける「対等な関係」のあり方 犬や馬などの動物をペットではなく「パートナー」として扱う人々がいる。彼らは動物と生活をともにし、恋人のように愛し、時にはセックスもする。『聖なるズー』は、そんな動物性愛者=ズーたちの姿を追ったノンフィクションだ。 センセーショナルなテーマだが、ズーたちをおもしろ半分で紹介するものでも、彼らの権利を声高に訴えるも