今日は、ある意味、科学者の「人間らしさ」を感じることのできる本のご紹介です。 『ノーベル賞の決闘』ニコラス・ウェイド著 丸山工作・林泉訳 岩波書店 1992年 335p 1977年のノーベル生理学・医学賞は、ロザリンド・ヤーロウ、ロジャー・ギヤマン、アンドルー・シャリーの三人に贈られた。うち、ギヤマンとシャリーの「争い」を追ったのがこの本。 二人の研究者が同じテーマの研究成果を争っている場合、勝利、名誉、業績……これらすべては、先に論文や学会で成果を発表した人のものとなる。「早い者勝ち」こそが科学界の常識だ。 相手との駆け引きとなると、学会や雑誌での発表を温存して競争相手に情報を漏らさぬまま、ある日満を持してすべてを発表するといった戦法をとることもある。でもこの戦法はリスキーだ。発表を温存している間に競争相手に同じ成果を発表されてしまえば、なにもかもが水の泡に帰すのだから。「沈黙」か「開示