冗談混じりだったのか。あるいは、思わず本音が口を突いたのか。 アトムズ時代から、実に33年間に渡ってヤクルトのスカウトや編成部長として活躍。若松勉や古田敦也をはじめとする名選手たちを独自の眼力で発掘してきた片岡宏雄さんは、自らが見出した一人、宮本慎也から投げかけられた「ある言葉」をいまでもはっきりと覚えている。 残念ながら詳しい日時も、どこの球場だったかも、すでに曖昧になりつつある。おそらくは2000年の途中。それでも、宮本とのやり取りは鮮明に記憶の中に刻まれている。 「片岡さん、ショートの選手ばかり取らないでくださいよ、と言ってきたんだよね」 1994年のドラフト2位で宮本をプリンスホテルから獲得して以降も、ヤクルトスワローズはドラフト会議で高卒選手を中心に遊撃手を積極的に指名・入団させていた。 *1995年 1位 三木 肇(上宮高) *1997年 3位 大脇浩二(北照高) *