■ムード・インディゴ〜うたかたの日々 (監督:ミシェル・ゴンドリー 2013年フランス映画) I. 自分がボリス・ヴィアンを耽読していたのは10代後半から20代にかけてだろうか。最初に読んだのは『赤い草』だったが、これが衝撃的だったのだ。その後、読破こそできなかったが、ハヤカワの全集を買い求め、幾つかの長編と短編を、時に驚嘆しながら、時に首を傾げながら読んでいた(時々ワケがわからなかったのだ)。その中で読んだ『うたかたの日々』は、「20世紀で最も悲痛な恋愛小説」という評価とは裏腹に、異様なほどの狂騒とアイロニーに満ちた作品だったと記憶している。 今回ミシェル・ゴンドリーにより映画化された『ムード・インディゴ〜うたかたの日々』の原作『うたかたの日々(「日々の泡」というタイトルの訳本もあり)』は、ロマンチックなファンタジーであると同時に、アバンギャルドでアナーキーな描写がふんだんに盛りこまれ、