現代の高度情報化社会においては、あらゆる情報がネットやメディアに氾濫し、多くの個人が「情報に流されて自己を見失う」危機に直面している。デマやフェイクニュースに惑わされずに本質を見極めるためには、どうすればよいのか。そこで「自分で考える」ために大いに役立つのが、多彩な分野の専門家がコンパクトに仕上げた「新書」である。本連載では、哲学者・高橋昌一郎が、「思考力を鍛える」新書を選び抜いて紹介し解説する。 香西秀信『論より詭弁』(光文社新書)2007年 連載第19回で紹介した『気骨の判決』に続けて読んでいただきたいのが、『論より詭弁――反論理的思考のすすめ』である。本書をご覧になれば、社会が必ずしも「論理的思考」で動いていないこと、現実の議論においては「反論理的思考」が有効であること、むしろ他者を説得するためには「論より詭弁」を使わざるえないことが、明らかになってくるだろう。 著者の香西秀信氏は、