ブックマーク / bakhtin19880823.hatenadiary.jp (124)

  • 【愛の◯◯】「不在」が「物足りない」と思っていたら - 音楽と本、それからそれから……。

    昼休み。 サークル部屋に入る。 居たのは、幹事長のミナさんと副幹事長の郡司センパイ。 挨拶を交わしたあと、入り口近くに着席して、お弁当箱を出す。 「手作り弁当だね、羽田さん」 輝くような眼で言うミナさん。 「もしかして、アツマさんのぶんも作ってあげた!?」 「そうですよ。よくわかりましたね、ミナさん」 「わかるに決まってるよ。羽田さんとアツマさんは、なんてたって――」 ここで郡司センパイが、 「そのへんにしとこーな、高輪(たかなわ)」 とミナさんに横槍をブスリと刺す。 「そのへんって、どのへん!?!? 意味わかんない、郡司くん」 「あんまりイジるもんでも無かろう、羽田の生活のことを」 「いや、羽田さんだけでの生活じゃないから。羽田さんとアツマさんの、ふたりでひとつの生活なんだから」 あははは……。 「べてもいいでしょうか。ミナさん、郡司センパイ」 「あ、そうだった、お昼だった。わたしもお

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    suoaei
    suoaei 2023/05/08
    そっか。小説だったのですね(;^ω^)
  • 【愛の◯◯】ぜんぶ崩れちゃいそう - 音楽と本、それからそれから……。

    アルバイトをひとつ辞めた。 人間関係とかいろいろあって、行きづらくなった。 それがいちばん大きな理由。 辞めたバイト先のお店を利用しづらくなった。 お店があった街自体にも立ち寄りづらくなってしまった。 収入が減る。 必然的に。 生活費が減るし……生活費のことだけでなく、いろいろと苦しくなる。 × × × バイトを辞めたことは親にはまだ言っていない。 単純に言いづらい。 言ってしまうと怒られるだろうし。 それに。 最近……親との折り合いが悪くなってきている。 厳しく育てられたけど、尊敬していた。 尊敬していたから、言うことを聞いていた。 それは、大学に入って自活を始めてからも変わらなかった。 それなのに。 先月、母親と電話したときのことだった。 余裕がなくなってきていたわたしは、母の細々(こまごま)とした言いつけを聞きながら、苛立ちを募らせていた。 『ちゃんと聴いてるの? 侑(ゆう)』 その

    【愛の◯◯】ぜんぶ崩れちゃいそう - 音楽と本、それからそれから……。
    suoaei
    suoaei 2023/05/07
    一度ご飯を作ってみては?卵かけご飯でもいいから。お母さんの気持ちです。。。
  • 【愛の◯◯】美術館帰りのメトロにて - 音楽と本、それからそれから……。

    ファッションセンスのないわたしだけど、きょうぐらい、オシャレして行かないとなー、と思った。だから、時間をかけて、念入りに身支度をした。 もっとも、アツマくんとデートするだとか、そういうわけではない。 「なんだ、出かけんのか?」 「――言ってなかったっけ」 「ああ」 「女の子とデートするのよ」 唖然とするアツマくん。 少し申し訳なく思い、 「ごめんごめん、デートってのは、言い過ぎたわね」 「……」 「サークルの同級生の娘(こ)といっしょに、美術館に行くのよ」 「……もしかして、大井町さんって娘か?」 「そうよ。よくわかったわね」 「――仲良くなったんだな」 「んーっ」 「違うんか?」 「距離は……あんまり、縮まってないんだけど。――でも、誘ったら、乗ってきてくれたから、『前進』してるのかな」 「ふぅん。……ま、友だち付き合いは、大事にな」 「ほんとね」 「ほんとね」と言ったあとで。 アツマく

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    suoaei 2021/11/07
  • 【愛の◯◯】スキルアップと特技の習得 - 音楽と本、それからそれから……。

    「利比古くん」 「なんですかあすかさん」 「きょうは、短縮版を目指していくよ」 「め、目指していくとは」 「だーかーらー、いつもよりも短く、具体的には文字数1000文字程度におさめていく、ってこと」 「1000文字ですか!? ずいぶん短くないですか。短縮版だからといって、手抜き――」 「それ以上はダメだよ、利比古くん」 「ええっ、それ以上はダメ、って」 「――短くまとめるのも、『技術』じゃん?」 「……腑に落ちませんが」 「腑に落ちて」 × × × 「あすかさん、今月が推薦入試ですよね?」 「だよ」 「正直――あんまり、忙しそうに見えないんですけど」 「わたしが?」 「はい。あすかさんが……」 「忙しいよ、それなりに」 「試験対策とか、ほんとうにしてるんですか……?」 「してないわけないじゃん」 「たとえば」 「面接練習。学校で、面接練習やってるの」 「へぇ……」 「けっこうたいへんなんだ

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    suoaei 2021/11/06
  • 【愛の◯◯】「中身だけじゃない。見てくれだって。でも……やっぱり」 - 音楽と本、それからそれから……。

    スカートのホックを留める。 ベルトを回す。 鏡で、じぶんの顔を見て、小さくため息をつく。 わたしは、じぶんの顔が、好きになれない。 もっと柔らかい顔立ちだったらよかったのにな、と思う。 人当たりが強い性格だということを、自覚している。 その攻撃性が、ダイレクトに顔に反映されているような気がして。 こんな顔を好きになるひとなんかいるんだろうか。 こんな顔を好きになる異性なんかいるんだろうか……。 ……文化祭の後夜祭のとき、わたしに手を差し出した彼。 濱野くん。 濱野くんは、わたしのどこを気に入ったの? 顔を、気に入ってくれたとしたなら、それはそれで、戸惑う。 わたしは――鏡の前で、笑ったことがない。 きょうも、鏡に映る眼つきが、キツい。 母にドアをノックされて、我に返る。 登校する時間が迫っていた。 × × × 放課後。 進路指導室を退室して、廊下に出たときだった。 向こうから、濱野くんが、

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    suoaei 2021/11/04
  • 【愛の◯◯】ふたりともかすりもしなかったけど、天皇賞の反省会はしたい - 音楽と本、それからそれから……。

    『こんにちは、創介くん』 『はいどうも、葉山さん』 『さっそく、秋の天皇賞の振り返りをしたいところなんだけど……』 『固かったですねえ~~!!』 『固かったねぇ~~!! 激安』 『3連複が350円で、3連単が2040円』 『ほんとうに16頭立ての競馬なのかしらね』 『3強の実力が抜けていたってことなんでしょう。サンレイポケットは、どうがんばっても4着止まりだっただろうし』 『鮫島くん、最高に上手く乗ってたのにね。コントレイルの内に入って』 『渾身の騎乗で、たぶんメイチ駆(が)けで、それでも前の3頭はとうてい抜けなさそうでしたからねえ』 『何回やっても、この3頭だったかな』 『絶望的なまでに、この3頭のレースでしたよね……』 『――まあ、わたしたちは、4着のサンレイポケットも5着のヒシイグアスも、あんまり評価していなかったわけだけど』 『惜しくもなんともなかったんですよね』 『創介くん、あな

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    suoaei 2021/11/02
  • 【愛の◯◯】穏やかなそよ風に誘われるように - 音楽と本、それからそれから……。

    ことしも、あと2ヶ月。 × × × フローベールの『サラムボー』を読みながら、副都心線に乗っていた。 目的地の駅で下車。エスカレーターに乗り、地上に出る。 月曜日で、駅の近くにある区立図書館は、残念ながらお休み。 わたしは、キョウくんの通っている理工学部キャンパスに直行する。 嬉しいことに、自販機にメロンソーダがあった。 構内のベンチに腰かけ、メロンソーダをゆっくりと味わう。 それから、岩波文庫の『サラムボー』を再度読み始める。 ほんらい、わたしは部外者なのだが、そんなことをだれも気に留めたりはしない。 まあ、ストレートで大学に進学していたら、3年生なんだもんね、今年度。 現役の大学生だと思い込まれるのも、自然の成り行き。 キャンパスに溶け込んじゃってる感じ。 ――講義の終了時間になり、建物から学生たちがドッと出てきた。 キョウくんの姿を、わたしは見逃さない。 馴染みのある姿が、眼に飛び込

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    suoaei 2021/11/01
  • 【愛の◯◯】「来年は牧がたぶん三冠王になってくれるわ」 - 音楽と本、それからそれから……。

    「アツマくん、きょうは短縮版――」 「お、来やがったか」 「――になるかどうかは微妙なんだけど」 「ふぇ、フェイントはやめてくれ」 「地の文なしで行くので、そこのところはよろしくね」 「おれとおまえのセリフだけってことだろ? 手抜きかよ」 「手抜きじゃないよっ! たぶん」 「心もとないなー」 「かっ、管理人さんだって、疲れたりもするのよ……」 「そりゃだれだって疲れるときは疲れるだろ」 「……アツマくん」 「なにかな」 「あなた……元気すぎない!?」 「エーッ、そんなことねーよ」 「わたし……じつは、ちょっと疲労感があって」 「ウソだぁ」 「ほんとよ!!」 「わかったわかったわかった、わかったから、そんなギューーッってしがみつくなよ」 「感じないの……? わたしが、疲れてるのを。これだけひっついてきてるのに」 「う~~ん」 「ねぇ!!」 「――まあ、どうせ、昼寝でもすりゃ、回復する程度だろ

    【愛の◯◯】「来年は牧がたぶん三冠王になってくれるわ」 - 音楽と本、それからそれから……。
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    suoaei 2021/10/31
  • 【愛の◯◯】お兄ちゃん、ぜったいぜったい文化祭来てね。もし、来てくれなかったりしたら―― - 音楽と本、それからそれから……。

    祝日明けの金曜日。 いよいよ、わが校の文化祭も明後日に迫り、校内は完全に文化祭の準備ムード一色だ。 授業もない。 ひたすら、クラスの出し物だったり、部活の展示だったりの準備にいそしむ。 じぶんのクラスの手伝いもそこそこに、わたしは教室を出た。 廊下を早足でずんずん歩いていると、 担任の二宮先生――『ニノ先生』が、向こうからやってきたではありませんか。 「ニノ先生じゃないですかー。どーしたんですか?」 「や、どーしたもこーしたもないだろ。クラスの様子を見に来たんだ」 「あー」 「あー、じゃない」 「ごめんなさい」 「……」 「……」 「……あすか、」 「ハイ」 「おまえ、じぶんのクラスの出し物に、非協力的じゃないか?」 ぎく。 「ぎく」 「ぎく、じゃない」 「ごめんなさい。」 「……部活やら、バンドやら、いろいろ忙しいのはわかるが」 「忙しいってことは、ちゃんとクラスのみんなには説明してます

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    suoaei
    suoaei 2021/09/25
  • 【愛の◯◯】蜜柑の漫画雑誌を読んだばっかりに……! - 音楽と本、それからそれから……。

    バイトから帰ってきた。 シャワーを浴びて、ゆとりのある服装になる。 ゆっくりとした足取りで、蜜柑の部屋のほうへ向かい、ドアを軽く2回ノックする。 『は~い』 「入るわよ、蜜柑」 『どうぞ~』 × × × ……散らかってること。 「もう少し、なんとかならないわけ? あなたの部屋」 「そんなに気になりますか?」 「なるわよ。雑誌とか、床に散らかしすぎでしょ」 「あー」 「あー、とか、言わないのっ」 蜜柑が散らかしっぱなしの雑誌類を、テキパキと回収して、 「まったくもう……じぶんの部屋以外のところのお掃除は、ちゃんとするのに」 「『どうしてじぶんの部屋だけは散らかすのよ!?』と言いたいわけですね」 「そういうことよ。…どうしてなの? 蜜柑」 …蜜柑は、あさっての方向を見て、なにも言わない。 はぐらかすつもりね。 どこまでわたしをイラつかせるつもりなのかしら。 バイト終わりのわたしに、ストレスを溜

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    suoaei 2021/09/12
  • 【愛の◯◯】土曜ビデオ通話はダブルヘッダー - 音楽と本、それからそれから……。

    髪が乾いた。 少し、ラフな格好で、ノートPCの前に座る。 PCの横に、コンビニで買ったコーヒー飲料を置く。 スタンバイ完了。 ビデオ通話を、立ち上げる。 × × × 「おはよう、葉山」 画面の向こうの葉山むつみに、笑いかける。 『いい笑顔ね、小泉』 ほめられた! 「えへーっ」 『笑顔はいいけど……』 「えっ」 『もう少し、服の着かたを、なんとかしなさいよ』 「えっダメ?」 『雑よ。…ひとり暮らしのマンションの部屋で、ほかにだれも見ていないからって』 「きびしーなー、葉山は」 『…厳しすぎたかしら?』 「そんなことないけど」 『まあ……土曜日だし、そういう格好するのは、わからないでもないわ』 「――葉山は、ちゃんとしてるよね」 『服?』 「服。」 『べつに、ちゃんとしてないから。起きたのも、わりと遅かったし、そんなに身支度に時間かけてないし』 「――でも、立派だ」 『立派? なにが?』 「え

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    suoaei 2021/09/11
  • 【愛の◯◯】葉山を優しく寝かせられたら、ビールが美味しいオトナになれる!? - 音楽と本、それからそれから……。

    さて、きょうも、葉山といっしょにバイトするお時間だ――と思っていたが、 葉山の顔色が、なんだか冴えないことに……わたしは、気づいた。 「葉山」 「えっ、八重子…なに?」 「……」 「な、なんでわたしの顔、のぞきこむの」 「……ねえ、葉山」 「う、うん、」 「あんた――調子、悪いでしょ」 「そっ、そんなこと……ないよ。ないって。」 典型的な、強がりの、証拠。 葉山の左肩に、右手をとん、と置いて、 「強がらないんだよ。葉山」 「つつつ強がってないもん」 「なんだか……反発する声にも、元気がないじゃん」 「あ、あるよぉっ」 「ウソだね」 「や、八重子ぉ」 「ズバリ、寝不足」 「――どうしてわかったの」 「ほらぁ~~」 くちびるを噛みしめる葉山。 ちょっとカワイイ。 わたしはこういうふうに断定する。 「夜中に眼が覚めた。それからずっと起きてる。睡眠時間が足りてない」 黙りこくる葉山。 やっぱり。

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    suoaei
    suoaei 2021/09/10
  • 【愛の◯◯】バッティングセンターとシュガーポット - 音楽と本、それからそれから……。

    バットを強く振って、 速球を打つ。 真芯(ましん)に当たって、 ボールが高く、飛んでいく……。 出てきたボールを、 ひたすら打つ、 打つ、 打つ、 打つ。 ジャストミートの連続。 かなりの球速も、わたしには関係ない。 ソフトボールの打撃練習で、鍛えてもいるし、 1球たりとも、凡打にはさせない――。 打って打って、打ちまくる。 なぜって? ……憤を、晴らすため。 どんな、憤かって? ……それが言えたら、苦労しないよっ。 都内某所、 お邸(やしき)からそう遠くない、 バッティングセンター。 『彼』とケンカになってしまったわたしは、 お邸を飛び出して、 このバッティングセンターに、急行した……。 筒香になれたらいいのに。 筒香みたいな塁打製造機になって、ボールをもっともっと、はるか向こうまで、飛ばすことができたらいいのに。 わたしは出てくる球をどんどんカッ飛ばしてるけど、飛距離の限界も感じ

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    suoaei 2021/09/09
  • 【愛の◯◯】ついにやってきた、衝突 - 音楽と本、それからそれから……。

    学生会館5階にある、 『漫研ときどきソフトボールの会』のサークル部屋。 入室してみると、 ・新田くん ・大井町さん のふたりしかいない。 「上級生のひとはいないの?」 訊いてみると、 「久保山幹事長がいたんだけど、漫画雑誌を買うとかで、コンビニに行ってしまって……」 と、大井町さんが答えてくれた。 すかさず、新田くんが、 「きょうはサンデーとマガジンの発売日なんだ。だから、買いに出たんだと思う」 と言い添える。 そっかー。 水曜日は、週刊少年サンデーと週刊少年マガジンの、発売日――。 たしかにそうだったわね。 漫研の空気に溶けこんだおかげで、無知だったわたしも、漫画雑誌の発売スケジュールを、だいぶ把握できるようになった。 「幹事長、戻ってきたら、きっと俺たちにサンデーとマガジン読ませてくれるよ」 笑って言う新田くん。 それは楽しみ。 他方、大井町さんはというと、 わたしにも新田くんにも視線

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    suoaei 2021/09/08
  • 【愛の◯◯】姉の本棚と積ん読タワーと - 音楽と本、それからそれから……。

    黒柳さんの発案で、『読書』をテーマにしたテレビ番組を、制作することになった。 ぼくは、図書館に取材に来ている。 司書の先生と話す。 どんなが借りられているのか訊くと、 「そりゃー、幅広いわよ。 小説だったら、ライトノベルから、純文学まで。 難解な哲学書を読む子もいるわね」 …そうか。 それは、そうだろうな。 借りられるは、幅広いに決まってる。 これは、もう少し、掘り下げていかないと……と思っていると、 「傾向、みたいなのは、あるわね」 「えっ、傾向?」 思わず、訊き返す。 「そう。 全体的に、どんなタイプのにしても――、 『そこになにが書かれているのか』を、いちばん重視して、生徒はみんな、を選んでいる気がするの」 「……。すみません、よく、わからないです」 「素直ね。羽田くんは、素直でいい生徒ね」 なぜか、ホメられた。 「――ああ、そうだ。それと。 『すぐ答えを知りたい』っていう子

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    suoaei 2021/09/07
  • 【愛の◯◯】文化祭の機運!! - 音楽と本、それからそれから……。

    9月といえば、なんといっても、文化祭! わたしの高校では、9月の終わりに、文化祭が開催される。 今年もまた、ガールズバンドのギターで、参加する予定。 ――あ、 バンド名、『ソリッドオーシャン』のまんまだったな。 意味がわからないバンド名であることは変わっていないので――ボーカルの奈美に、バンド名改変を、検討してみようかなあ。 まあ、新しいバンド名とか、わたしぜんぜん考えてないし。 奈美も「『ソリッドオーシャン』がいい!」って突っぱねるかもしれないし。 × × × 授業終わり。放課後。 中庭で、ミヤジを発見したが、珍しく、バードウォッチングをしていなかった。 「なんでミヤジ、きょうはなんにもしてないの?」 ダラリ、とベンチに座っているミヤジに、声かけ。 「そんな日も、あるんだ…」とミヤジ。 「え、不調!?」とわたし。 「鳥が丸焼きされてる動画でも見ちゃったの!?」 「…なに言い出すんだ、あす

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    suoaei 2021/09/06
  • 【愛の◯◯】ハンバーガー食べ散らかしお嬢さま - 音楽と本、それからそれから……。

    日曜日。 バイト先の模型店でレジ番をしていたら、 見知った、若い女の人が、 お店に入ってきた。 「椎菜さん!?」 叫び声のような声を出してしまうわたし。 だって、だって、完全アポ無し。 事前連絡、なにもなく、突然に突撃してきた、椎菜さん……! 「しーちゃんだよ~~」 おどけて言う彼女。 「あれ、アカ子ちゃん、ボーゼンとしてない? なんで??」 ……。 「ま、まずですね、」 「うん、」 「わたしがここでバイトしてるって、どうしてわかったんですか」 「え。そりゃ~わかるよ。わからないわけないじゃん」 ……。 「用件は……?」 わたしの疑問を華麗にスルーし、 店内を見回して、 「わああ~~、プラモデルが、いっぱ~~~い」 「聴いてるんですか……?」 「ね、フィギュアはないの!? フィギュア」 もうっ。 「フィギュアの取り扱いはございませんっ」 ――わたしはひとりでに立ち上がっていて、 「お店に用

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    suoaei 2021/09/05
  • 【愛の◯◯】とある土曜日の星崎姫 - 音楽と本、それからそれから……。

    ――どの色のリボンにしようかな。 いつもより少しだけ時間をかけて、リボンの色を選ぶ。 そしたら、茶々乃(ささの)ちゃんから電話がかかってきた。 『おはよう、姫ちゃん』 「おはよう、茶々乃ちゃん」 『えっと、きょう、ヒマ? ――土曜日だし、いっしょに街に繰り出して遊んでみたいなーとか、思ってたんだけどさ』 あちゃー。 「……ごめん、きょう、用事があるの」 『あー、そっかー』 「ほんとうに、ごめんね。またこんど、近いうちに、買い物とかしようね」 『当日になって急に電話かけたわたしも悪かったよ』 「ううん、ぜんぜん悪くない、茶々乃ちゃんは」 ちょっぴり、会話が途切れたかと思えば、 『――用事って、ヒミツ??』 と、茶々乃ちゃんが攻めてくる……。 「……うん。」 『プライベートとか、プライバシーに関わっちゃう?』 「……よく、わかったね」 『だって、姫ちゃんのことだもん』 …ニヤケぶりが伝わってく

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    suoaei 2021/09/04
  • 【愛の◯◯】嘆きのロマンチストの、軽やかに揺れるポニーテール。 - 音楽と本、それからそれから……。

    キョウくんから、LINEメッセージ。 『きょうのバイトも、体調に気をつけて、がんばってね!』 『ファイト!!』というスタンプ付きだった。 うれしい。 『うん、がんばるよ。 キョウくんがいるから、がんばれるんだよ。』 と返信した。 …こっ恥ずかしい文面になっちゃったかも。 × × × 例によって、お客さんが帰ってしまって過疎る時間帯に、『彼女』が入り口ドアの鐘を鳴らして、入ってきた。 「八重ちゃんは?」 『彼女』――ポニーテールのお姉さんは、中身のビールが半分になったジョッキを置いて、わたしに尋ねてきた。 「八重子は都合で休みです」 面と向かい合うわたしは答える。 「じゃあ、葉山さん、あなたとマンツーマンだね」 …マンツーマン、って。 若干困惑していると、おじさんが、わたしの手もとにメロンソーダを運んできてくれた。 メロンソーダ効果で、少し気分が落ち着く。 「葉山さん、メロンソーダ好きなの?

    【愛の◯◯】嘆きのロマンチストの、軽やかに揺れるポニーテール。 - 音楽と本、それからそれから……。
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    suoaei 2021/09/03
  • 【愛の◯◯】生徒役とイントロクイズ - 音楽と本、それからそれから……。

    やったぜ。 きょうは、バイトのシフトが入ってない。 つまり、一日中、お休みだ。 自由だ、フリーダムだ~! ……というような認識は、あまりにも、甘かった。 リビングのソファでごろ寝していたときだった。 愛が、通りかかってきて、 「ねえちょっと、アツマくん」 「…?」 「こっち向いて」 …イヤな予感しかしねぇぞ。 「はい。こっち向けた。よくできました」 「愛よ。おまえ……なにを、たくらんでる」 「うふふ、うふふのふ」 「なんだよその気色悪いリアクションは」 「気色悪くないからー。 ……あのね。 これから――、 わたしの生徒になってくれない? アツマくん」 × × × 教科書やら参考書やらをワンサカ持ってきて、 テーブルの上にドバァッと広げる愛。 「おれになにさせる気なんだ」 「生徒役をやってよ」 「ってことは、おまえが、先生か?」 「そ。あなたには、高校時代に戻ったつもりでいてほしい」 「いっ

    【愛の◯◯】生徒役とイントロクイズ - 音楽と本、それからそれから……。
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    suoaei 2021/09/02