未完のファシズム 「持たざる国」日本の運命 (新潮選書) 著者:片山 杜秀 出版社:新潮社 ジャンル:新書・選書・ブックレット 未完のファシズム 「持たざる国」日本の運命 [著]片山杜秀 現在の日本には、つぎのような見方が行き渡っている。それは、日露戦争までの日本人は、合理的・現実的・普遍志向的であったのに、以後、日本人は非合理的・非現実的・反普遍的となってしまった。ゆえに、日露戦争までの日本人のあり方を参照すべきである、というものだ。本書は、そのような司馬遼太郎的史観をくつがえすものである。 たとえば、日本人が日露戦後に非合理的・精神主義的となったのは、第1次大戦を十分に経験せず、日露戦争の体験を通して世界を見ていたからだといわれる。確かに、日本軍は青島要塞(ようさい)の攻略においてドイツ軍に楽勝したように見えるが、それは日露戦における旅順要塞の惨劇をくりかえさないために、軍の近代化をは