3年前の冬の話だ。 その時の俺は25歳。大学院修士課程を終えて就職したから、社会人2年目が終わろうかという冬だった。 地元は関西だが、就職を機に関東へ引っ越してきた。家族とも友人たちとも離れた場所で一人暮らし、仕事もまだまだ慣れない、そんな生活に孤独感が日に日に強まっていた。 俺には彼女がいなかった。 生まれてこのかた、一度として彼女というものがいなかった。 しかしその時の俺は、寂しさを紛らす相手が欲しいと思っていた。 俺の会社には、昼休みになると食堂の入り口に保険のおばちゃんが何人か集まってくる。入社したばかりの右も左も分からない若者たちを捕まえて、保険に加入させようとするのだ。来るのはいつも決まった三人。一人は矢口真里に似た、ぎりぎりお姉さんと呼べそうな女性。一人は椿鬼奴に似たおばちゃん。一人はブルゾンちえみ似のおばちゃんだ。 俺はブルゾンちえみと仲が良かった。矢口と椿は保険の話をして
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