獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授 井原 裕 【Q】「新型うつ病」,「非定型うつ病」など,うつ病概念が広がるとともに,従来の薬物療法偏重主義では対応しきれない患者が増え,臨床現場で混乱がみられているように思います。多様化する「抑うつ状態を呈する患者」たちに,どのような心構えとテクニックをもって診療にあたるべきか,獨協医科大学越谷病院・井原 裕先生のご教示をお願いします。 【質問者】姜 昌勲 きょうこころのクリニック院長 【A】最近になって「薬物療法では対応しきれない患者が増えた」というよりも,「そもそも抗うつ薬とは効かないもの」なのです。臨床の混乱は,精神科受診者が増えたため,その中のうつ病患者も増え,その分「薬物療法では対応しきれない患者」も増えたものと思われます。 抗うつ薬のnumber needed to treat(NNT,プラセボ効果でなく薬効で患者を1人治すために,何