ノンフィクション作家による2010年の平凡社新書。軍部内の衝突を利用して軍国主義化していく日本が、やがて満州事変から太平洋戦争へと突入し、サンフランシスコ平和条約が結ばれるまでの昭和史を、いったん個別の事例に注目してから普遍化している。 新書の頁数で15もの話題をあつかっているため、ひとつひとつの情報量はさすがに多くない。かわりに一般向けの通史から忘れられがちな視点を示し、逆に対立が激しい争点には原点へ立ち返るよううながし、問題提起と読めば密度が濃い内容だった。 著者は保守派でありつつも*1、敗戦直後に戦後民主主義を教えられた世代であることや、ソ連の脅威を意識しつづけた北海道出身であることを背景に、戦前日本や軍国主義は基本的に批判している。特に、各戦争犯罪の証拠がないという言説に対して、資料を隠滅した日本側に反論の資格はないという立場を何度となく明確にしている。 南京事件については、単純に