近年、ディストピア小説がブームだ。そのなかで再評価されている名作の1つが、マーガレット・アトウッド『侍女の物語』(1985年)。出生率が低下したアメリカで、キリスト教原理主義のクーデターによってギレアデ共和国が誕生する。出産能力のある女性は、強制的に子どもを産む道具=侍女にされてしまう。そんな設定の同作は、2017年にHuluでドラマ化され(『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』)話題になった。 鴻巣友季子氏 そして日本では最近、『侍女の物語』のグラフィックノベル版や、女性たちがギレアデに抵抗する34年ぶりの続編『誓願』(2019年)が刊行された。翻訳家・文芸評論家の鴻巣友季子氏は、過去にもアトウッドの日本語版を手がけ、今年、『獄中シェイクスピア劇団』(2016年)、「老いぼれを燃やせ」(2014年)(「文藝」2020秋号掲載)、『誓願』とこの作家の作品を訳している。鴻巣氏にディストピア小説