シェークスピア劇が今日まで広く上演され続けているのは、劇場に足を運んだり戯曲を読んだりして楽しむ無名の人々が大勢いたからだ。著者はそんな問題意識から、これまであまり顧みられなかった女性の観客や読者に目を向け、史料に残る彼女たちの痕跡を丹念にたどる。視点のユニークさが光る労作だ。2015年にロンドンで有名俳優主演の「ハムレット」が上演されたとき、劇場は初めてシェークスピア劇を見るような若い女性で
トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 書評 > 記事一覧 > 記事 【書評】 シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち 北村紗衣 著 Tweet 2018年5月27日 ◆本の書き込み、手紙も分析 [評者]冬木ひろみ=早稲田大教授 本書は一種の演劇受容論であるが、これまでのものと大きく異なるのは、十八世紀半ばにシェイクスピアがいかにしてイギリス文学を代表する正典となっていったかを、歴史上軽視されがちであったシェイクスピアを楽しむ女性たちに注目して解き明かしている点である。元となったのは著者がロンドン大学に提出した博士論文だということだが、ここでの筆致は比較的軽みを帯びている。カンバーバッチの舞台『ハムレット』や、北海道の小さな映画館で上映されたディカプリオの『ロミオ+ジュリエット』を見にきた女性たちを裏切ることはできないという、冒頭部分での女性ファンに寄り添う著者の言葉は、
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