読書の秋の到来である。秋の夜長は時代小説を読みふけるのもいい。ここでは特徴的な2人の歴史小説家を対比したい。佐藤賢一と藤本ひとみである。共にフランス歴史小説をメインとする作家だが、奇しくも最近は共に幕末物を出している。 『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を受賞した佐藤は、東北大学大学院文学研究科フランス文学専攻博士課程単位取得満期退学という経歴を有する。『預言者ノストラダムス』(同)『皇帝ナポレオン』(角川書店)で知られる藤本も、ナポレオン史研究学会会員やブルゴーニュワイン騎士団騎士などの肩書を持つ。2人とも歴史への造詣の深さを活かし、時代の雰囲気や歴史的人物の心情を現代に蘇らせている。加えて佐藤は男性的な性愛の描写、藤本は女性的な恋愛要素が濃厚という点で好対照をなしている。 その2人の作家が奇しくも幕末物、しかも東北の佐幕藩の視点に立った小説を刊行している。佐藤は庄内藩と庄内藩御