「歴史的な懸案で未解決のままの琉球(沖縄)問題を再び議論できる時が来た」。こう主張した5月8日付の中国共産党機関紙・人民日報が、日中関係の新たな「火種」となっている。筆者は、中華人民共和国が成立した1949年以降の外交文書を外務省档案館で閲覧しているが、毛沢東主席は米国の施政下に置かれた沖縄を「日本に返還すべきだ」という態度を一貫させてきた。なぜここに来て沖縄問題を持ち出して来たのか——。それは、自らの歴史に「嘘」をつくものであり、その自分の歴史に背を向けた強引な戦略は、自分で自分の首を絞めるようなものだ。 「琉球は日本のものではない」 人民日報論文は「『馬関条約』(下関条約)と釣魚島問題を論じる」という見出しを掲げ、政府系研究機関・社会科学院の張海鵬氏と李国強氏が執筆した。 論文は沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)が歴史的に見て「台湾の付属島嶼」で、中国固有の領土だったか論を展開している